保健所時代に学んだこと①

私が就職したのは、まだ精神保健福祉士という資格ができる前でした。


その頃には“精神障害者”という言葉もなく、精神疾患や精神科病院に対するマイナスイメージが強かったと思います。

その当時は統合失調症についての相談、アルコール依存症の相談が業務のほとんどで、精神疾患に対する治療を地域のクリニックでしていこうという流れがありました。
保健所の嘱託医の先生方はまだ若手で地域志向が強く、我々相談員と一緒に何度も家庭訪問に行き、患者さんやご家族の言葉に耳を傾けて治療が必要な方を医療機関につなげるという支援をしました。その中で学ぶことは多かったと思います。

アルコール依存症への取り組みからの学び

アルコール依存症についてみれば、大阪にはアルコール依存症に対する専門医療機関が複数あり、専門医療へのアクセスは恵まれています。断酒会やAAといった自助グループの活動も盛んです。


当時は断酒会と専門医療機関・行政が手を組みアルコール依存症について考えていくという流れが主流で、私が入職した年にアルコール関連問題に関するネットワーク会議ができました。その会議は今も途切れることなく続いていて、国事業の研究報告書(第 1 期アルコール健康障害対策推進 基本計画における対策の取組状況および効果検証に関する研究)で地域連携の好事例として紹介されています。
この会議では参加メンバーから最新の情報があり、そこから新たな取組みが生まれるということが何度かありました。継続しているからこその動きです。


そういう動きの1つとし「AUDIT」の導入があります。「AUDIT」はWHOのアルコール依存症に対する戦略で、アルコール依存症になる手前の人たちを見つけて介入することで病気になる人を減らす、という目的のためのスクリーニングテストです。アルコール関連問題に関する学会で海外の先生が紹介され、それを聞いて英語の資料を持ち帰った方が会議の場で紹介したことがきっかけで、「東大阪版AUDIT」を作り活用しました。


今では「AUDIT」は全国的に普及していると思いますが、当時は先駆的でした。頑張って研究論文にして平成19年度の大同生命厚生事業団主催の「地域保健福祉研究助成金」に応募したところ採用され、その後保健師雑誌(月刊地域保健2013年8月号)や新聞社(2013年7月6日朝日新聞 元気のひけつ)の取材につながりました。

今から思い返すと、なかなかいい仕事していたじゃない!と感じますが、私一人でできたことではありませんし、その頃は何だかやみくもに頑張っていただけでどれだけ周りの人たちに支えられていたのかを実感できていなかったなぁと反省します。


連携が大事だと言われますが、組織から離れた今だから余計にその力を感じるのかもしれません。