支援者との関係性が大切なわけ

福祉のいろいろなサービスを利用すると、支援者と呼ばれる人たちとの関わりが出てきます。例えば、介護保険のサービスならケアマネージャーだったり、障害福祉サービスなら相談支援専門員といった人だったり、それ以外にも利用するサービスに応じていろいろな職員さん達と関わることになります。

支援する立場の人たちは支援を受ける人との信頼関係が大切だということを学び、それは当たり前のことになっています。

支援する立場の人も、支援を受ける立場の人も、お互いの信頼関係が大切なことは経験的にわかります。なぜ大切なのでしょうか、またどうやって信頼関係を作っていけばいいのでしょうか。

人は社会的な生き物です

ヒトの進化から考える

ヒトは動物の中では、足が速いわけでも腕力が強いわけでもなく、鋭い牙や爪もありません。もしアフリカのサバンナに一人で置き去りにされたら、肉食獣の獲物になってしまうでしょう。

ヒトが厳しい自然環境で生き延びるには、仲間と協力して狩りをしたり、作物を作って分けあったりすることが大切でした。

いかに仲間と良好な関係を持って生活するか、それは生き延びることと直結していたのです。

孤独=生きていけない?

社会の中で生きる上では仲間との関係性は大切で、仲間との関係性が良ければ安心するし、関係性が悪ければ精神的に不安定になります。

ヒトがトラのように、単独行動をして生きてきた動物だったら、仲間との関係性はどうでもよかったでしょう。しかし、私たちは社会を作り、その中での人間関係を保つことで繁栄してきました。

ひとりぼっちでは生きることができない、孤独がとても辛いのは当たり前のことです。

自律神経系の進化を見ても、ヒトは他者と良い関係性を作り、協力していくための神経系を発達させてきています。

人間関係での傷つきを癒す

私たちの社会は複雑で、さまざまな人間関係がその時々で作られます。人間関係からの影響を受けながら育ち、生活しているわけです。

人生のある時期に、あまり良くない人間関係があってそのためにしんどくなることは誰しも経験しがちです。しかし、良くない人間関係があっても、同時に良い人間関係があれば、しんどさを乗り越えていく支えになります。

人間関係で受けた傷は人間関係の中で癒していくことができます。

支援する・されるの人間関係

福祉サービスを利用する立場の人は、何らかの社会的な困りごとを抱えていて、サービスを利用するようになるまでに傷つき体験がある方もたくさんおられます。

福祉サービスを利用するようになれば、今の困りごとが全くなくなって幸せな人生を送れるというわけではないでしょう。大変さを抱えつつも自分にとって役に立つサービスを利用しながら生きる、そういう生き方を余儀なくされることもあります。

今までに人間関係で辛い思いをしてきたことを理解し、福祉サービスを利用しながら生活することの意味を理解してくれた上で支援してくれる、そういう人との出会いがあれば、しんどさに向き合いながらでも自分らしい生き方をしていく助けになります。

福祉サービスを使って支援する立場の人は、人の役に立ちたいとか、以前自分も助けてもらったことがあるので今度は自分が助けたい、といった純粋で優しい気持ちを持っている人が多いです。

支援する立場の人も支援される立場の人も、同じ人間同士として立場の違いを理解し尊重しながら人間関係を結ぶことができれば、お互いにとって素晴らしいものを得ることができるでしょう。