アディクションについて
アディクションとは
アディクションという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
英語の辞書でアディクション(addiction)という言葉を調べると、「ふけること」「専心」などと書かれています。
アルコール依存や薬物依存、買物依存、ゲーム依存など、ふけりすぎて日常生活に困りごとが出ている状態になると病気なんじゃないか、治したい、という動きにつながります。
ここでは何かにふけりすぎて、生活に困りごとが出てきている状態をまとめて「アディクション」という言葉で考えていきます。
日本でのアディクションへの取組み
アルコール依存症
日本の精神医療で本格的なアディクションに対する取組みが始まったのは、アルコール依存症に対するものからです。
アルコール依存症は昔は「慢性アルコール中毒」と呼ばれて、精神科病院に入院してアルコールを断ち切っても退院するとすぐに飲酒する治らない病気、アルコール依存症の患者さんは、厄介な患者さんだと思われていました。
ところが、アメリカでAA(アルコホーリクス・アノニマス)という自助グループができて、それまではお酒をやめられないと思われていたアルコール依存症の人たちがお酒をやめ続けるようになっていきました。
AAは世界中に広がって、日本にも自助グループが生まれていきました。日本ではAAを見習って、断酒会という日本独自の自助グループも誕生しました。
アルコール依存症に対する治療は自助グループとの連携によって確立していきます。アルコール依存症の専門病院ができたり、専門外来をするクリニックができていきました。
大阪では故小杉好弘医師をはじめ、アルコール依存症に対する治療に熱心に取組む医療者、自助グループメンバーと行政機関が協力してアルコール関連問題に対応してきた歴史があります。(業界では大阪方式と呼ばれています)
アルコール依存症から他の依存症へ
アルコール依存症への対応方法を基礎にして、薬物依存症、ギャンブル依存性に対する治療法が広がりつつあります。
大阪でも認知行動療法をベースにした治療プログラムを利用することで、アルコール依存症以外の依存症の問題に取り組む医療機関が増えてきています。
近年のカジノを含むIR(総合型リゾート)誘致という動きの影響で、国はギャンブル依存症対策に力を入れ出しました。また、子どもたちのゲーム依存も問題視され、教育分野でも関心を持つ先生方が増えてきています。
心理学的な視点からのアディクション
心理学的な視点から考えると、何かに依存するのは依存することで自分の抱えている問題から目を背けている(問題に直面しないように依存を使っている)という考え方をします。
例えば会社のストレスをアルコールを飲むことで発散することはよくありますが、その人の抱えていう闇がもう少し深い場合はヤケ酒で止まらずに依存症になってしまう、と考えるわけです。
社会的な側面からのアディクションの問題
一方で、ゲームなどはそのゲームを継続的にしてもらうための工夫(販売戦略)が巧妙で、ハマりやすくなるように設計されています。
オンラインゲームで無料で遊べるけど、ゲームを有利に進めるためには課金して様々なアイテムがあった方がいい、課金と言っても少額だからいいだろう、そんな気持ちになるように作られているわけです。
最初は少額でも、人によってはそのゲームに夢中になり、多額の課金をしてしまったり、長過ぎる時間をゲームに費やしたりします。
アルコールにしてもギャンブルやゲームにしても、最初から自分の問題から目をそらす目的でするわけではなく、気づけばのっぴきならない状態に陥っていた、と感じる人が多いのではないでしょうか。
薬理作用による依存
依存性のある薬物(アルコール、タバコなど)には、心理的な側面抜きにやめたくてもやめ続けるのが困難になる身体依存が形成されます。
処方薬依存という問題もあります。精神安定剤や睡眠薬の中には依存性が問題になっているものがあります。そういう薬は急にやめると、その反動でイライラや不眠などの症状が出ることがあります。
アディクションからの自由
アディクションについていろいろな側面から理解することは、アディクションから自由になるための助けになります。
「いつまでもそんなことをしてたらダメだ」と説教して止められるものはアディクションとは言えません。止めたくても止められない、後悔と自己批判や自己嫌悪、諦めなどがごちゃ混ぜになっていることはよくあります。
対象が何であれ、生活に具合の悪さが起こってくるほどに抜けられなくなっていて、止めたくても止められないのがアディクションです。
治療の中で自分と向き合い、他者の体験談に耳を傾ける中で、なぜ依存せざるを得なかったのかを理解される方もおられます。
同じ悩みを抱えている仲間の存在、身近な家族や友人の理解、医療機関のサポート、カウンセリングなどの心理治療など、困りごとの解決に役立つものは複数あります。
諦めずに助けになるものを見つけていきましょう。