“うつ“について

一般的に「うつ」と呼ばれている状態にはいろいろなタイプがあるのをご存知でしょうか?
今回は「うつ」のタイプについて解説していきます。

「うつ」の中にはいろいろな病気がある?

うつ病とうつ状態

「うつ病」という病名を知っている方は多いでしょうが、「うつ病」とよく似た言葉に「うつ状態」というものがあります。

「うつ病」のようにひどく気分が落ち込んだ状態を「うつ状態」と呼びます。ですから「うつ病」ではない病気や健康な人が「うつ病」のようになっている場合に「うつ状態」という言葉を使います。

「うつ病」はお医者さんが診察して、その人の症状がどれくらい続いているか、その症状を引き起こすような体の病気がないかなど、総合的に判断して診断をつけた場合に「うつ病」となります。

気分が落ち込んでいる時に『この頃うつでねぇ…』と日常会話で言うことがありますが、この場合の「うつ」は必ずしも「うつ病」というわけではありません。

うつ病のタイプ

メランコリー型うつ病

メランコリー型うつ病というのは典型的なうつ病と呼ばれているタイプです。

生真面目で頑張り屋さんの性格の人が、無理をしすぎてうつ病になった場合は、大体このタイプでしょう。

十分な休養と投薬治療により改善します。再発を防ぐために、無理しすぎな性格に気づいて行動パターンを変えるため、認知行動療法を治療の中で使うことがあります。

非定型うつ病

例えば、仕事が引き金になってうつ病になったが、仕事以外の趣味の活動では楽しく過ごせるような、自分の好きな場面では塞ぎ込むような気分が無くなって明るくなるタイプのうつ病です。

典型的なうつ病とは違う部分が多いため理解しにくく、「甘えている」と言われたり、「この人は本当にうつ病なのか?」と疑われたりしがちです。

抗うつ薬の治療に加えて、カウンセリングや生活習慣の見直しなども効果的な治療です。

季節性うつ病

決まった季節になるとうつ症状を繰り返すタイプです。

以前ご相談を受けていた方は、「冬になるとうつが出てくるんです」と言われていて、「ひどい時にはしんどくてお米をとぐことさえ出来ないから、そんな時はとがずに炊いています」と教えて下さいました。

冬は日照時間が短くなることとも関係があったのかもしれません。

産後うつ病

出産後はホルモンバランスが大きく変わるため、その影響で気分が不安定になりやすい時期です。

赤ちゃんのお世話をするようになることで生活も大きく変化し、それまでには無かったストレスもかかるようになります。

そのような中で、一部の人はうつ病になることがあります。

以前勤めていた保健センターでは、保健師さんたちがうつ病になりやすそうな方の相談にのったり、必要な時には医療機関に繋いでサポートをされていました。

うつ病以外の病気とうつ状態

躁うつ病

躁うつ病はその名前のとおり、躁の時期とうつの時期があって、躁とうつを繰り返す病気で、うつ病とは治療薬も違います。

躁うつ病のうつの時期とうつ病を見分けるのは専門の先生でも難しいことがあるようで、最初はうつ病だと診断していたけれど、経過を見る中で躁うつ病だと分かることがあります。

躁うつ病は躁とうつでワンセットなので、躁症状が強いとうつの時期の落ち込みがひどくなる傾向があります。そのため躁になる時のパターンに気づき、早めに対処することが大切です。

パーソナリティ障害とうつ

パーソナリティ障害という診断を受けている方の中には慢性的なうつ状態があったり、ストレスがかかると一時的にうつ状態になる場合があります。

うつ状態が慢性化していても、他人と関わる時には元気そうに振る舞うので、常に“死にたい気持ちと隣り合わせで生きている“ことが外からは分からないこともしばしばです。

うつ状態に対しては抗うつ薬が使われますが、うつ病より効きにくいことも多く、薬物療法以外にもカウンセリングなどの心理療法が効果的な場合もあります。

自閉症スペクトラムとうつ

自閉症スペクトラムのために“周りの人と自分は何かが違う“という感覚を持ったり、“周りの人がその人を正しく理解できなくて頻繁に注意する“ということが起こりがちです。

そのために自己肯定感が低くなり、うつ状態になる場合があります。

自分自身も周りの人も、自閉症スペクトラムという個性があることを理解して認めることが大切です。

アルコール依存症とうつ

アルコール依存症でうつ病を合併している人が一定数おられます。

アルコール依存症の治療では、医療だけでなく自助グループに参加することが大切ですが、うつ病のためにグループの中に入っていくことが難しかったり、死にたい気持ちが強く出て自死の危険性が高まる場合があります。

私が相談を受けた中にも、最初はうつ病だと思って治療を進めていたところ、アルコールの問題もあったという方がおられました。その方の場合はうつ病の治療を一定進めたところで、アルコール依存に対する治療を受けられ回復されました。

認知症とうつ

認知症の初期には、意欲がなくなったり、口数が少なくなったり、うつ病になったのかな?と思うような状態になることがあります。

認知症になると、今までできていたことがうまくできなくなったり、自分ではちゃんとしているつもりなのに周りの人から「どうしたの?」と指摘されたりすることが増えたりします。

認知症とはわからずに、自信だけがどんどん失われる状況は辛いものです。早めに診断を受けて治療を受けたり適切な対応方法を学ぶことが、ご本人にも周りの人にとっても役に立ちます。

まとめ

このように「うつ病」や「うつ状態」にはいろいろなタイプがあり、それぞれのタイプに応じた治療や対応があります。

「うつかな?」と感じた時には専門家の助言を受けて、より良い治療や対処を進めていくようにしましょう。

どこに相談すればいいかわからない時には、各都道府県にある精神保健センターや地元の保健所・保健センターの精神保健福祉相談員に相談してみるといいでしょう。